ダストン男爵を追い返してから、村の人々はますます親しく、俺たちを受け入れてくれるようになった。

 魔物として怖れられていたミュウも、今では子供たちに大人気だ。

 子供たちに木の繊維から《構築》したボールを与えて、サッカーを教えてやると、みんな夢中になって遊ぶようになった。町の外れの広場が小さなサッカー場になり、俺はサッカーゴールも造ってやった。

「ミュウ! そっち行ったぞー!」

 子供たちが声を上げる。

「みゅ!」

 ミュウはボールに体当たりして、他の子にボールを回す。

 たまには、俺も混じってリフレッシュしたりする。気づけばすっかり懐かれていた。

「ソラさんもあそぼ!」

「いいぞ、じゃあミュウと反対のチームだな」

「みゅ! マケナイ!」

 そうしてひと遊びして、また村の見回りに戻る。

「また遊ぼうね!」

「おう」

「お兄さま!」

 迎えに来てくれたのはフウカだ。

「子供、お好きなんですの?」

 革の水筒を渡しながら、そんなことを尋ねてきた。俺は礼を言って、ひとくち水を飲んで答える。

「んん……まあ、嫌いではないよ」

 特別子供好きというわけではないけれど、遊んでやるのは楽しい、という感じだ。

「子供は嫌いではないのですね……ふうむ」

 フウカはくちもとに手を当てて、何かを考え込んでいる。

「どうした? フウカも子供と遊んでみたいのか?」

「赤ちゃんって、どこから来るのでしょうか」

 これは――大人が回答しにくいピュアな質問、第一位のやつだ!

「それはその……コウノトリというのがいてだな……」

 俺が後ろ頭を掻きながら、必死で言葉を探していると、

「オスの精子をメスの卵子が受精して、細胞分裂を始めるところまではわかっているのですが……」

 めちゃくちゃわかってんじゃねえか。

 エルダーリッチの教育だろうか。しかし問題になるのは、その“過程”だ。

「しかしまあ、それは生命の神秘であるからして、安易に触れる問題でもなく、当事者同時の合意があって初めて行われるものであり……つまり、その……

 ダメだ、俺には圧倒的に“良いパパ力”が足りない――!