フルーツというくらいだから、食べても平気だろう。俺はおそるおそる、虹色の身を囓った。

「………………!」

ほんのひとかけなのに、サクランボに似た酸味が口いっぱいに広がった。思わず唾が出てくる。咀嚼すると、よく熟れた巨峰のような甘みが舌を喜ばせる。飲み込むと、炭酸のようなシュワっとした感覚があって、鼻に抜ける香りは桃に似てとろけるようだ。

「うっま!」

囓ったレインボーフルーツを嗅いでみると、少しナッツっぽさも混じっている。いろんな果実を、ぎゅっと詰め込んだような、素晴らしい果実だった。

「はー、腹いっぱいになった……」

当分は、水と食料に困ることはないだろう。俺はレインボーフルーツをポケットに入るだけ入れて、洞窟へと戻った。

今になって気づいたけれど、洞窟は空気が濁っていてひどく臭い。俺はレインボーフルーツの香りを嗅いで、鼻をごまかす。

「まあ、じきに慣れるだろ」

俺は固い岩場で横になって、拾ったオークキングの魔石を手のひらで転がした。

「そうだ、あれを試してみるか」

魔石を拾ったときに考えたことを、俺は実行した。



《抽出》



「これでどんな変化が起きるのか……ん?」



『オークキングの魔石を《抽出》しました』

『オークキングのスキル【豪力】を取得しました』

【豪力】:一時的に攻撃力を三倍にする