「よし、こいつを使うぞ」

 そこからは共同作業だ。ドラゴンの姿に戻ったリュカに運搬を任せて、俺はミスリルの剣で石材を加工。十分な石材を運んだら《構築》を使い、水道橋を完成させる。それから再び川に戻り《分解》と《構築》を繰り返した水路を引いた。

「完成ね! やっぱりソラはすごいわ!」

 丘をまたぐ水道橋を見上げながら、リュカは俺に抱きついた。

「君が協力してくれたからだよ、ありがとう」

 そう言って、俺はリュカの髪を指で梳いた。

「みゅ!」

 ついでにミュウの頭も、もにゅもにゅと撫でてやった。


  *  *  *


 公衆浴場を作れるくらい豊かな水源を手に入れるのは結構大変だったけれど、こうして成果を目の前にすると、やった甲斐があったと思えた。

 浴槽の周囲には、ざーっと洗い場を設けて、石鹸で体を洗えるようにしてある。獣脂を流し込めば石鹸ができる装置を造っておいたので、俺たちがいないときでも洗い場は使い続けられるはずだ。

 俺が洗い場で体を洗って風呂に入ると、村の人々もそれを真似て、おそるおそる浴槽に浸かる。

「これは……なんともいえん……!」

「体中の疲れが溶けだすようじゃ……」

 老人に続いて、子供たちも湯に浸かる。女湯の方では、リュカたちが面倒を見ているはずだ。

「ソラどの……わしらは天国にいるんじゃろうか……」

 村長が言った。

「つい先日まで、食うや食わぬの生活をしていたのが、今はこんなにも心地良い……」

「現実ですよ。これから、村はどんどん良くなっていきます」

「ソラどのは……救世主ですじゃ……」

 それから、公衆浴場に併設したサウナに入った。公衆浴場もサウナも、リュカから受け継いだスキル《獄炎焦熱》の力を弱めて転用している。なので術者である俺が、火を消そうと思わない限り消えることはないし、湯や湯気の温度を調節する機構も造っておいたから、半永久的に使い続けることができる。

「暑いのう……じゃが、気持ちが良い……」

「無理しちゃいけませんよ。少し経ったらかけ湯をして、また浴槽に浸かるといいです」

 そんなふうに村で生活をするうちに、直すところはいくらでも見つかった。

 まずは道が悪い。俺は近くの森から石材を採取して、石畳の道を造った。そして崩れかかった建物を、次々と新しく組み上げていく。悪魔の森で採れた材料を使うことも考えたが、それはエルダーリッチに止められた。