「みゅ!」

 ミュウは俺の言葉を、素直に喜んでくれた。

 リュカも、目を細めて楽しげに言った。

「ソラがいれば、どんな場所でも楽しいと思うわ!」

「それは……なんというか……」

 嬉しいんだけれど、さすがに照れくさい。

「でも、水には不自由してるみたいね。悪魔の森だと、困ることはなかったのに」

「そうだな。村に沿った川は涸れてるし、新しい水源を見つけないといけない」

 そうして、しばらく近くを散策した。草原が広がる丘の上で寝転がったりして、俺たちは広い世界を楽しんだ。そんなことをしつつ山に近づいてみると。

「あ!」

 リュカが声を上げた。

「川が流れてる!」

 幅が大きく、水量も多い。これなら村に引くことができるかもしれない。

 念のため《鑑定》を使う。

 水質は良好、農業にも、飲み水にも使えそうだ。

「リュカ、ちょっと上空から高低差がどうなってるか確認してもらえるか?」

「ええ、わかったわ!」

 そう言ってリュカは、人間態を保ったまま、背中から翼を広げた。

 こういうときのために、リュカの服には背中にスリットを作ってある。

 リュカは大きく羽ばたいて、上空へと昇った。

 しばらく村の方向を眺めてから、リュカは再び地面に降り立ち、翼を収納した。

「川の方が上にあるわ。でも丘と丘の間が谷になってる」

「なるほど……となると水道橋が必要だな」

 俺たちは山に入ることにした。石が露出しているところがあれば、錬金術で加工して石材として使える。

「エルダーリッチが言ってたわ、こういうのデートって言うんだって」

 山を登りながら、リュカが言った。

「デートって、楽しいわね!」

「みゅ! デート!」

 向こうの世界にいた頃、登山デートなるものがあることは、噂には聞いていた。当時はあり得ないと思ったものだ。下山する頃にはクタクタになるんじゃないか、などと考えていた。まあ、体力が保てるハイキングのコツみたいなものはあるんだろうけれど。

 それはともかく、ステータスの大幅な上昇で、もはやほとんど疲労を感じなくなった俺と、もとより体力に満ち溢れているリュカとのふたりなら、デートは苦もなく成立する。

 意識すると、ちょっと照れてはくるんだけど。

「君が楽しんでくれてるなら、嬉しいよ」

 俺がそう言うと、リュカは満面の笑みで答えてくれた。

 そもそもミュウが一緒にいる時点で、デートが成立しているのか疑問ではある。

 またしばらく山を登ると、とうとう露出した岩肌を見つけた。

「これは良さそうだ」

 《鑑定》を使ってみると、水道橋を造るのに十分な硬度があることがわかった。