尋ねてみると、代わりにホエルが答えた。

「洗いがいがあったよ~いっぱいゴシゴシしたね~」

「……うん」

 なるほど、ずいぶんホエルに可愛がられたらしい。俺もマッサージでひどい目にあったことがあるから知っているが、ホエルはちょっと力加減がわかっていないところがある。

「それはなんというか……ご苦労さま」

「……うん」

 いかん、これはだいぶ疲れているな。早めに城で休ませよう――などと思っていると、フウカが声を上げた。

「ではエルダーリッチ、手筈どおりにお願いしますわ!」

「わかったよ」

 エルダーリッチがフッと指を振ると《門》が消えてしまった。

「なにを……」

 俺がなにか言うひまもなく、次は地面から布団がムクムクとせり上がってくる。エルダーリッチの魔法だ。小屋の中は、たちまちひとつの大きなベッドになってしまった。

「どういうつもりだ、エルダーリッチ?」

「ちょいとした賭けに負けてな。こうすることになってしまった。許せ。私は出かけてくる」

「え? え? え?」

 エルダーリッチは《透過壁》を抜けて、外に出て行ってしまった。

「お兄さま!」

 布団の上で、フウカが抱きついてくる。

「ここで存分イチャつきましょう、イチャつき倒しましょう!」

 そこでフェリスが言った。

「まてフウカ、ソラは平等に分けるという話だったはずだ」

「早いもの勝ちですわ!」

「ならこっちにも考えがある」

「ちょっと待ちなさいよ!」

「みんなでハグしよ~」

「コヤ! セマイ!」

 みんなが布団の上で暴れて、こんがらがってしまった。顔がフェリスのふとももに挟まれ、ホエルの胸が背中に当たり、リュカが腕に絡みつき、フウカが足に抱きついている。

「もが、むぐぐ!」

「ちょっとどきなさいよフェリス! ソラが苦しそうでしょう!」

「お前がどけばすべて解決する」

「お兄さま! 今日は寝かせませんわ!」

「よしよししてあげるね~」

 このままでは圧死してしまう。

 俺は知恵の輪のようにこんがらがった彼女たちの隙間を縫って、慌てて小屋を抜け出した。

「ふう……」