収穫が終わる頃には、日も暮れかかっていた。俺はくたびれ果てた村の人々に、昨日の大鍋を使って、コロコロマメとホクホクカブ、モモイノシシのポトフを振る舞った。モモイノシシは、城の冷凍庫で保管していたものだ。みんなで大鍋を囲み、ポトフを味わう。コロコロマメは水に漬けて《時間推進》をかけ、一晩寝かせた状態で調理してある。予想通り、形も崩れず、柔らかい。

 モモイノシシの柔らかい肉と一緒に食べると、口の中でほろほろになって、飲み込めばお腹がポカポカしてくる。

「ソラどの、もはやどう感謝していいものか……」

 村長はポトフを食べながら言った。

「この村はどんどん良くなりますよ」

 まだまだ、やりたいプランはたくさんある。若い人たちを労役に取られて、どれだけ苦しい思いをしてきたのだろう。老人と子供たち。彼らには、少しでも豊かな生活をしてもらいたい。そうすれば、俺たちは深い信頼を勝ち得ることができるだろう。

 外の世界の住人を味方にするのは、知らない世界で生きていく上で、とても重要なことだ。

 悪魔の森の城に招くことも考えたのだが、それはエルダーリッチに止められた。

「一足飛びに豊かな世界を目の当たりにすると、人は元の暮らしを改善する意志を失ってしまう」

 そう言って、おれの肩を叩いた。

「発展は段階を経る必要があるんだよ。君が強さを得たのと同じことだ」

 俺たちは小屋に帰り、女性陣が先に《門》を潜って城の大浴場へ向かった。

「サレンも行っておいで」

「……え」

「ゆっくりしてくるといい」

「ゆっくりしようね~」

「え? え?」

 サレンはホエルに抱き上げられて《門》の向こうへと消えていった。

 残されたのは、俺とミュウだ。

「サレンはうまく溶け込めるかなあ」

 イスに座り、膝にミュウを抱えている。

「ミンナ、シンセツ、ダイジョウブ!」

「それもそうだな」

 ミュウのぷにぷにした頭を撫でながら、俺は風呂の順番が回ってくるのを待っていた。


  *  *  *


「いいお湯だったわ!」

 リュカたちが《門》を抜けて、小屋に戻ってきた。

 しかし心なしか、サレンが疲れているように見える。

「お風呂はどうだった? サレン」