すると、再び壁が現れた。この一連の作業で、俺は再び魔法を習得したことになる。

 次はフェリスを《鑑定》する。

 膨大なステータスの最後に、『付加魔法《鍵》』とあった。これで《透過壁》を抜ける方法もわかった。そして六人と一匹に《鍵》の魔法をかけていく。

「これで、下準備は整ったな。みんなは《門》で城に戻るなり、好きなことをしていてくれ」

「私は村の様子に興味があるわ。話を聞いていると、統治する者に問題がありそうだもの」

「私も、外をもう少し詳しく知りたい」

「お兄さま、わたくしも見聞を広めたいですわ!」

「私はね~お散歩したいかな~」

「みゅ!」

 エルダーリッチに関しては、魔法の力を借りる可能性があるので来てもらわなければならない。

「サレンはどうする?」

 俺が尋ねると、大きな帽子がこっくりと頷いた。

「ソラと、一緒に行く……」

 そういうわけで、俺はエルダーリッチとサレンと共に、村長と畑に向かうことになった。

「そうだ、その前に用事があるんだ。ちょっと待っててくれ」

 俺はそう言って、《門》の向こうの悪魔の森へと戻った。


  *  *  *


 プライドを捨てることを、考えなくてはならないかもしれない。

 魔王たる私の種族は、吸血鬼だ。

 相手の血を吸うことで、その力を得ることができる。

 ソラの血を吸えば、私は以前より遥かに強い力を手に入れることができるだろう。

 しかし。

 ソラはあまりに強力な錬金術師だ。おまけにそれに付き従う魔物たちも、すさまじい力を秘めている。とても隙は突けそうにない。

 と、なれば。

 私はプライドを捨て、自らの弱さを武器にするしかない。

 ソラを誘惑して――意のままに操るのだ。

 私は魔王だ。

 世界を統べるために手段は選ばない。


  *  *  *