「いずれ“そういう”部屋も必要なんじゃないか? ひとりひとりを相手にするのも大変だろう」
今度は俺が真っ赤になる番だ。俺も健全な男子であり、いま俺を囲むのはあっちの世界にいた頃には考えられないような美少女ばかり、という状況で――いかんいかん。
「とにかくこれで、少なくとも俺たちは不自由しないってわけだ!」
「みゅ!」
ミュウは俺に同意するようにぽいんっと跳ねる。こういうときに、ミュウの存在はとてもありがたい。
「そういえば、この小屋には戸がないな」
エルダーリッチが言った。
「門が覗かれる可能性があるぞ。村人が好奇心を起こして門をくぐれば、悪魔の森で魔物に狩られるかもしれん……そうだな、キミに次の魔法を教える良い機会だ。《門》ほどのものではないがね」
そう言って指をかざすと、小屋の入り口が黒いものでふさがれた。しかし不思議なことに、部屋は暗くならない。
次にエルダーリッチは、フェリスの肩に触れた。フェリスの体が一瞬、紫色に輝く。
「この壁を抜けてみろ」
「………………」
フェリスが黒い壁に触れようとすると、手がすり抜けた。
「そういうことか」
そう言ってフェリスは壁に向って足を踏み出す。そうして、壁の中に消えていった。
「次はフウカだ」
「わかりましたわ!」
フウカがフェリスと同じように壁を抜けようとすると――。
「いった!」
ゴンッと頭をぶつけた。
「なんですの!?」
「……というわけだ。術者によって許可されたものだけが、この壁を抜けることができる」
「口で説明すればよろしいじゃありませんの!?」
フウカはひたいを両手で押さえて抗議するが、エルダーリッチはどこ吹く風だ。
「百聞は一見に如かずだ。この壁は自然光は通すが、この通り視界は通らない。音も閉ざされる。仕組みはわかったな?」
俺は頷いた。
「ではやってみろ」
俺はさっそく魔法を《鑑定》した。
『魔法《透過壁》』
それを《分解》する。壁の向こうにはフェリスが立っていた。
「そろそろ中に入ってもいいか?」
「ごめんフェリス、心細かったよな」
「そんなこともない」
ツンとした表情で、フェリスは答える。フェリスが部屋に入ると、俺は作業を続けた。
《構築》