「ソラは特別だ」
エルダーリッチは、俺の肩を抱き寄せた。
「世界一の錬金術師だ。おまけに一流の魔法使いである私の弟子。できないことはない」
「言い過ぎですよ、小屋を造っただけです」
「錬金術だけでそれができるのは、ソラくらいのものだよ」
俺はリュカたちに言った。
「今日からここが、俺たちの本拠地だ」
「ちょっと、狭くない……?」
「あまり大きく土地を使うわけにはいかないし、用途を考えればこれで十分だよ」
「用途……」
そう呟いたとたん、リュカは真っ赤になった。
「そ、そうよね! これだけあれば十分よね!」
鼻息荒くリュカは言った。ほかのメンツも、なんだか目がギラギラしている。どういうことだろう。
「ともかく、中に入ろう」
七人と一匹が入ると、かなり狭い。もう少し広く造っても良かったかもしれないが、
「“使う”分には問題ないな」
その瞬間、みんながそれぞれ顔を見合わせた。そして、頬をほんのり赤く染める。
「やっぱり私たちは群れだから……そういうコミュニケーションは大事よね……」
リュカの言葉に、フェリスが応える。
「私はふたりきりでまぐわう方が好きだ」
「まぐわった経験があるみたいに言うじゃない!」
「経験がなくても好みくらいある」
「待って待って、まぐわう!?」
とんでない誤解を生んでいる。
「実はこの部屋には目的があってだな」
「お兄さまの目的でしたら、きちんと伝わっていましてよ。恥じらいがないわけではありませんけれど、それ以前に知的好奇心というものがありますわ! 僭越ながらわたくしからお先に」
と服を脱ごうとするフウカを見て。
「そういう遊びをするのね~私はいいよ~」
と、ボタンを外し始めるホエル。彼女の色気はちょっとシャレにならない。
「違う違う、そういうことじゃない! 見ててくれたらいいから! 服着て!」
俺は早速、いま使える唯一の魔法を使った。手を掲げて念じると、その指先が紫色に輝く。そして現れるのは、大きな黒い板――エルダーリッチから教わった超越魔法《門》だ。
「これで悪魔の森の城と行き来するんだよ。向こうには物資もあるし、いろいろと便利だから。この小屋はそれを隠すための……」
みんなを見ると、なんだか露骨にがっかりした顔をしている。
「やっぱ、ソラだもんね……」
「ソラだから仕方ない……」
「お兄さまですから……」
肩を落とす面々と、ニヤニヤと笑うエルダーリッチ。