それもただの魔物ではない。
魔王たるこの私の、全盛期を遙かに超える実力を感じる。
悪魔の森とやらには、こんな魔物たちが跋扈していたのか。
怖ろしい場所もあったものだ。
そして――なにより怖ろしいのは、それを従えているソラだ。
あれだけの力を持った魔物が、力のない人間についていくはずがない。
そしてその力を持ったソラが、脆弱な村の人間どもを助けようとしている。
不可解だが――それがソラの性質なのだろう。
利用しない手はない。
「どうした、サレン」
「ううん、なんでもないよ……」
私はソラを利用する方法について、思いを巡らせていた。
* * *
「若い者がいなければ、できないことばかりなんじゃ。畑の世話もそうじゃし、鍛冶仕事や大工仕事も、子供と年寄りではとても……」
村長が言った。
「以前は行商の馬車が来ることもあった。しかし食料と引き替えにする家財道具もなくなり、とうとうそれも……」
行商が通ったであろう轍には、草が茂っている。もう長らく馬車は通っていないのがわかった。
「それに、どこの村も自分たちで手一杯で、助け合うこともできぬ……」
「なるほど」
つまり俺たちは自力で、かつできる限り力仕事を省いて、村を再建することを考えなくてはいけない。
「ひとつ、お願いがあるんですが」
俺は村長に言った。
「小屋をひとつ、建ててもいいですか?」
「それは構わんが……空いておる家はいくらでもある」
「ちょっと、特別なことに使うんでね」
俺の言葉を聞くと、村長はリュカたちを見て言った。
「なるほど“特別なこと”じゃな! あんたもお若いからそれは当然じゃ! おまけに山ほどおなごを連れて……それは仕方ないことじゃ。ぜひ立派な小屋をお建てなさい」
村長の笑顔はよくわからないが、とりあえず小屋を建てる許可はもらった。
村長に使える空き地まで案内してもらうと、俺は早速仕事に取りかかる。
まずは土を《分解》して、大量の粘土を用意する。それを四角い小屋の形に盛り立てて《焼成》すれば完成だ。
一連の作業を見て、村の人々は感嘆の声を上げた。
「錬金術師は、こんなことまでできるのか……」