「私もだ」

 フェリスが吹雪を纏う。蒼氷狼フェンリルが雄叫びを上げた。

「ならわたくしもですわ!」

 フウカがそう叫んだ瞬間、雷が鳴り響き、大雨が降り注いだ。

「おお、恵みの雨じゃ!」

「半年ぶりじゃ、雨じゃ! 雨じゃ!」

 雷雨を呼ぶ、大きな翼を広げた不死鳥。それがフウカの本当の姿だ。

「じゃあ私も~」

 と、ホエルの身体が光に包まれ――。

「ストップ! ストップ!」

 俺は叫んだ。みんなも続く。

「ホエルだけはダメ!」

「やめておけホエル」

「いけませんわホエル!」

「ムラ、コワレル!」

「え~」

 ホエルはつまらなさそうに、光を収束させた。

 彼女の正体は白鯨。世界最大の生物だ。小さな村など、一瞬でぺしゃんこになってしまうだろう。

「そんなわけで、俺たちは外の世界のことを何も知らないんです。俺たちはできる限り村のみなさんの助けになります。その代わりに、俺たちはみなさんから外の世界について教えていただく。これで納得してもらえますか」

 村長は、しばらく考えてから答えた。

「なるほど、国王様からの追放……あり得る話じゃ」

 ため息をついて、村長は続ける。

「今の国王様は、慈悲というものを持ち合わせておらぬ。若い者はみな労役に取られて、村はこんな有様じゃ。おまけに魔王討伐とやらで、税はどこまでも重くなる……」

 そう言って、俺の目を見た。

「あんた方のすさまじい力は見せてもろうた。それを村のために活かしてもらえるというなら、それよりありがたいことはない」

「話はまとまった、ということでいいですかね」

 俺は村長に手を差し出した。

「これからよろしくお願いします、村長!」

「こちらこそじゃ」

 村長は枯れ木のような手で、俺の手を握った。


  *  *  *


 まさか、まさかまさかまさか!

 ソラが、ただはべらせているだけだと思っていた女たちが、魔物だったとは。