食事を終えると、ソラは村長に畑を案内させた。
「ひどく痩せてるように見えるな」
「昨今の水不足が原因じゃ。もちろん、それだけではない」
村長は干からびた土を手ですくった。
「牛を税の代わりに取られてしまっての、放牧ができんのじゃ。そうなると土が痩せてこうなってしまう」
聞いたことがある。人間は土を休ませるために牧草を植えて、それを牛に食べさせ、その糞を土の栄養にするという話だ。それなしに連作を続けていると、土が痩せて野菜が育ちにくくなるという。長く生きていれば、人間の知識に触れることもあるのだ。
「土を鍛える豆も、領主のダストン男爵の命令で植えることができんのじゃ。ホクホクカブだけを作り続けろと仰っておる……いくら陳情しても無駄じゃった」
村長は痩せたこぶしを握りしめて言った。
「しかし、死ぬ前にいい思いをさせてもろうた。おそらくあんたは死神かなにかじゃろう。わしら年寄りだけでよければ、喜んで生け贄になるわい」
「いや、だからそんなつもりはなくて……」
私もてっきり、村の人間を食べるか、物資を奪うか、魔術に利用するかするのだと思っていた。
ますますソラの思惑がわからない。
* * *
俺は村の人々を集めて、説明することにした。
ふたたび村の広場に集まる。
「いいですか、俺たちは悪魔の森から来たんです」
「みゅ!」
「悪魔の森? 聞いたことがないのう……」
「そこは……怖ろしい場所なのか?」
「ええ、少し前まではね」
俺は村の人々に、今までの出来事を話した。
「俺は、こことは別の世界から来たんです。気がつくとお城にいて、それから国王に悪魔の森へと追放されました。いろんな魔物に殺されかけましたが、生き延びて……彼女たちに出会ったんです。彼女たちも魔物です」
俺はリュカたちを紹介したが、村の人々はまだ訝しんでいる様子だ。
「国王様に……追放?」
「あのおなごたちが魔物……本当かのう……」
「しかしさっき鍋の土台を……」
「まどろっこしいわね、なら証明してあげる!」
リュカがそう言った瞬間、彼女の身体が炎を纏う。その炎が膨れ上がると、巨大な竜が現れた。獄炎竜リンドヴルムだ。
「おお……まさか本当に……」