そのうちに、隠れていた子供たちも姿を見せ始める。みんな痩せこけていた。見るのがつらいほどだ。やはりスープにしておいて良かった。消化の良いものから、徐々に慣らしていく必要があるだろう。

「ソラ」

 サレンが話しかけてきた。

「どうした?」

「スープを作って、どうするの?」

「村の人たちに食べてもらうんだよ」

 サレンは不思議そうな顔をして、俺を見上げる。

「それをして、ソラにはどんな得があるの?」

「いろいろあるさ。あとで説明する」

 俺はそう言って、サレンの帽子をポンと叩いた。

 そのうちに、鍋が煮えてきた。俺は土台から鍋に上ると、器にスープをすくって、少し味見をする。こんな量の調理をしたのは初めてだけれど、なかなかの出来だ。干し肉の旨味がしっかり出ていて、ホクホクカブの滋味が舌に広がる。

「そろそろですよ、みなさん。器を持ってきてください。順番に並んで」

 村の人々は、おそるおそるといった様子で列を作る。怖がってはいるようだけれど、やはりお腹を空かせているのだ。俺は老人と子供たちの器に、順番にスープを注いだ。

 反響は、すさまじかった。口の中をヤケドしそうな勢いで、みんなスープにがっついている。ホクホクカブは、柔らかいジャガイモみたいな食感で、根菜らしい風味がある。それが干し肉の旨味と相まって、ホッとするような味わいになっていた。

「こんな美味いものは……いつぶりじゃ……もう死んでもええわい……」

「ありがたや……ありがたや……」

 老人はひとりごとをこぼしながらスープをすすり、子供は無言で干し肉をかじっている。

 みんなどんどんお代わりをして、鍋はすっかりからっぽになった。

「相変わらずお兄さまは料理の天才ですわ!」

「ありがとう、フウカ。サレン、外の世界の料理はよくわからないんだが、これで大丈夫かな?」

 文化の違いというものはあるはずだ。俺やフウカたちが美味しいと感じるからと言って、外の人たちもそう感じるかどうかはわからない。村の人々は美味しいと言ってくれているけれど、それは飢えのためかもしれないのだ。

「うん……美味しいよ」

サレンはこっくりと頷いた。


  *  *  *


 ソラという男は、いったいどこから現れたのだろう。

 そしてなにが目的なのだろう。

 私を王国の兵どもから救い、今は村の者どもを救っている。

 行動原理がさっぱり理解できない。