森を歩いていると、猛毒茸がけっこう見つかった。俺は《分解》でこいつらの臭いを消し、《構築》で美味しそうなキノコに形状を変化させる。そうして加工した猛毒茸を、あちこちに撒いておいた。これを食べた魔物が死ねば、俺のレベルが上がるという寸法だ。

そうして罠をしかけつつ探索を続ける。歩きづらい森だが、いくら進んでも息が切れなかった。

「お……ついに……!」

苔むした岩と岩の隙間から、ちょろちょろと水が流れている! 湧き水だ!

疲れてはいなかったが、喉はカラカラだった。

俺は手を伸ばして水をすくおうとしたが、ふと手を止めた。

「危ない危ない」

森の湧き水には、たとえばカンピロバクターといった危険な細菌が含まれていることがあるらしい。猛毒茸のこともあるし、この森にはどんな毒があるか知れたものじゃない。



《鑑定》



〈状態:きれいな水〉と出た。

「やった……!」

緑色に光る文字を確認すると、俺は両手で水を掬って喉に流し込んだ。

「うまい……」

ただの水が、世界一美味いと思った。痛いほど乾いていた喉が、きれいな水で潤っていく。目が覚めるようだ。

「この場所は覚えておかないとな」

ちょうど近くに切り立った茶色い岩があったので、これが目印になりそうだ。

「次は食料……か」