我が相棒ながら、ミュウはほんとに不思議なやつだ。
やがてスクリーンに、村が映し出された。中世を舞台にしたゲームで見るような、木の柵で囲われた素朴な村だ。しかし。
「若い人間が少ないな……」
呟いたのはエルダーリッチだ。
彼女の言うとおり、村は老人と子供ばかりだった。老人たちは、暗い顔で畑で作物を収穫している。子供はその手伝いをしていた。老人も子供も、みな痩せていた。
細い根菜を引き抜いては、カゴに入れていく。どう見ても豊作には見えない。
「俺たちに食料を分けるような余裕はなさそうだな」
「そういうときこそ、錬金術の出番ではないかな」
エルダーリッチは続ける。
「もちろんそれは君の力だ。使い道は君が決めるべきだろう」
「………………」
仮に村の人々を助けるとして、俺たちは魔物の一行だ。受け入れてくれるだろうか。
スクリーンには、変わらず痩せた老人と子供の暗い顔が映し出されている。彼らを俺の力で救えるのであれば、それ以上のことはない。
「悩んでいるのか? ソラ」
フェリスが言った。
「ソラには力がある。拒まれれば押し通せるし、敵対されれば跳ね飛ばせる。ソラはソラのやりたいことをやるべきだ」
「そうですわお兄さま! わからない相手にはガツーンと一発キメてさしあげれば、誰だって立場というものがわかるものでしてよ!」
俺はフェリスとフウカの言葉に、苦笑いする。
「そんな乱暴なことをするつもりはないよ。ただ俺は……」
「あの村の人たちを~助けたいんだよね~?」
ホエルが言った。その言葉を継ぐようにリュカが、
「そうよ、ソラは困っている相手を見捨てないもの!」
悪魔の森での体験を、リュカは思い返しているのかもしれない。
「君は本当にわかりやすい男だ。そして根っからのお人好しだな」
エルダーリッチが言った。
「君は、君の思うところを為せ」
「わかったよ。さあ、行こう! ……と、その前にだ」
俺は近くの林にある、木の蔓を《分解》して《生成》した。
「サレン、これを被って」
即席の麦わら帽子みたいなものだ。村の人々を少しでも怖れさせないためにも、角は隠した方がいいだろう。
「……わかった」
サレンは素直に俺の作った帽子を被った。
しばらく歩くと、ミュウがスクリーンに映し出していた村に辿り着いた。
映像どおり、ひどい有様だ。
崩れかけた家、乾いた畑、村の人々のボロボロの服。
「みゅ!」