「……なにか、決まったの?」

「ああ、決まったよ」

 俺はサレンに言った。

「君は、どこか行きたい場所があるのかな?」

「……べつにないわ」

「それなら、俺たちと一緒に来て欲しい。俺たちは田舎者でね、あまりこの辺りのことに詳しくないんだ」

「……わかった。また豆のパンをくれるなら、いいよ」

「決まりだな、これからよろしく」

 俺はサレンの、小さな手を握った。


 *  *  *


 あっという間に兵士を蹴散らしたあのスライムには驚いた。

 だが様子を見るに、ソラとかいう男もその取り巻きの女たちも、それ相応の実力を備えているらしい。

 これは思わぬ収穫だ。

 私が力を取り戻すのに、大いに役立ってくれるだろう。

 さっそくだが、私は小さくてもいいから拠点を築きたかった。

「ソラ、あの先に小さな村があるよ」

 私は声をかけてみる。

「そうなのか。食料の調達ができそうだな」

 やはりだ、ソラは村を襲う気だ。実力を見る良い機会が訪れたらしい。


  *  *  *


 俺は腕を組んで考え込んだ。

「さっき兵士を倒したばかりだ、争いは避けたいな。村の様子を知れたらいいんだが」

「マカセテ!」

 ミュウがぷるぷるっと震えると、ぽんっと黒くて丸いものが頭から飛び出した。

 黒くて小さいタピオカのようなものが、フワフワと宙に浮いている。

「ミュウ、これは?」

「テイサツ、スル!」

 黒いタピオカは、サレンが指さした方向へと飛んでいった。すると、俺たちのすぐ近くにスクリーンのようなものが現れて、映像を映し出した。これは、あのタピオカから見えているものらしい。俺はスクリーンに《鑑定》を使ってみる。

《遠隔透視魔法》

「ほんとに、どこでなにを食べたのやら……」