「そうやってソラが自分のことばかり考えてたら、私たちはついてきてないでしょう? 大切なのはプライドを持つことよ」
「そんなものを大事にして生きていけるほど、外の世界が甘いといいな」
「どんな世界であれ、生き方は貫くべきよ!」
「独りよがりは相変わらずか」
「なんですって!? 私はソラのことを考えて……!」
――まあ、多少の摩擦はある。
「それならわたくしも話がございますわ、お兄さま」
メガネをクイッと上げて言った彼女はフウカ。小さな女の子だが、その正体は雷を操る不死鳥だ。
「わたくしが考えるに、サレンは外で最初に出会った相手ではありますけれど、他の人間に追われている身でもあるようですし、かばい立てすればこちらに累が及ばないとも限りませんわ、ここは安全策を採って……」
フウカの話は、基本的に終わらない。
「みんなお話するの好きだね~」
このぽやぁっとした女の子はホエル。こう見えても世界最大の魔物である白鯨なのだ。
「ボク、サレン、タスケタ! ダカラ、イッショニ、イク!」
足下でぽいんぽいんっと跳ねる小さな相棒、ミラクルスライムのミュウ。
というわけで、全員で会議をするような感じになってしまった。
サレンの目の前でできない話も出てくるだろう。俺はサレンを肩から下ろした。
「ほら、あそこにお花畑がある。ちょっと遊んでおいで。大事なお話があるからね」
俺はこんな子供だましの言葉しか思いつかなかった。しかしサレンは、
「……わかった」
素直に俺の言葉を受け入れて、花畑へと入っていった。
「迷子にならないようになー!」
振り向くと、ミュウとホエルを除いた四人が深刻そうな顔で俺を見ていた。
最初に口を開いたのは、エルダーリッチだ。
「ソラ、注意しておけ。あの女の子は魔物だ」
「魔物に対して偏見があるみたいね」
リュカが口を挟む。
「でも、エルダーリッチの言うとおりだわ。においでわかる」
「あの子には俺たちをどうこうできる力はないよ」
実はあの子を最初に見たとき、俺は《鑑定》を使っていたのだ。
「レベル12の吸血鬼だ。こう言っちゃなんだけれど、敵じゃない」
「ソラ、レベルだけで敵を判断するな」
フェリスが真っ直ぐ俺を見据える。フウカもそこに言葉を重ねた。
「そうですわお兄さま。いくらレベルが低くても、策を弄する相手であれば、油断はできません。謀殺、毒殺、崖から突き落とす、さらにはお兄さまを寝床に引き込んで閨房術を仕掛けてくるとも限らず、優しいお兄さまはそんなことをつゆ知らず、魔の手に引き込まれてその挙げ句……」
やっぱりフウカの話は終わらない。