「なんでこんなところにスライムがいやがる」

「ええい、邪魔するな!」

「カカッテコイ!」

「こいつ、喋りやがった!」

勝負は一瞬でついた。反撃する暇も与えず、ミュウは次から次へと腹に体当たりをかます。

「ゴボォ!」

「ゲハァッ!」

立派な鎧を凹ませた男たちは、みな呻きながら崩れ落ちた。連中の目からは、ミュウの動きを、まったく捉えることができなかっただろう。本当に、よく成長したものだ。

「マダヤルカ?」

「ひ、ひいっ!」

残った男は一目散に逃げ出して、丘の向こうへと消えていった。

「よくやった」

「ウン!」

ミュウを撫でてやると、女の子が駆け寄ってきた。

「あ……ありがとうございました……」

「怪我はない?」

「ええ……本当にありがとうございます……!」

女の子は深々と頭を下げる。

そこで俺はやっと気付いた。

彼女の頭に、大きな二本の角が生えていることに。

外の世界では、こういう子は普通なんだろうか。





*   *   *





「魔王討伐! おめでとうございます!」

王城、謁見の間で歓声が上がる。

「いやー、余裕ッスよ余裕!」

後ろ頭を掻きながら〈破壊神〉がニヤニヤと笑う。

「つってアンタ、魔王倒したとき、HPほとんど残ってなかったじゃーん」

そう言って〈魔女〉が笑った。

「お互い様だろ、へへへ」