「ではその役に立たない枕を持って、お前はなぜソラの部屋の前に立っている」

「それはその……ソラが寒がるといけないから、暖めてやらねばと思って……」

「では私が行こう」

「あなたは冷気の使い手でしょ! ここは火炎を操る私こそが」

「ソラを黒焦げにする気か」

膠着状態に陥ってしまった。なんと運のないことだ。しかし言えることはある。

「そもそも私は」

「待て……何か声が……」

フェリスが寝室のドアに耳を澄ました。

「盗み聞き? お上品ね」

「異常事態だったらどうする? お前はソラを助けないのか?」

「……一理あるわ」

私も耳を澄ました。

――女の声が聞こえる。

「もの覚えが早いではないか……ではこれはどうだ……?」

「俺……もう駄目だ……」

――ソラの声も聞こえる。どこか苦しそうだ。

「男の子だろう……こらえてみせろ……」

――対して、女の声は余裕があって。

「そんなこと言ったって……もう……」

「ほれほれ……もう駄目なのか……? こういうやり方もあってだな……」

「ああ……それ以上やられたら……」

我は悟った。これは異常事態だ。

「「待ったあー!!」」

我とフェリスがドアを蹴り開けると、ソラとエルダーリッチが、ぽかんとした顔でこちらを見ていた。

「……む?」