「戦闘に長けた錬金術師は稀少だからな。錬金術を用いた鍛錬は、きっと君の体組成にも影響を及ぼしていることだろう」

ああ、そういう。

「ふたりで激しく燃え上がらないか」

そういうのでもなかったー!

「実はいろいろと道具を持ってきているんだ」

マジかよ。いきなり道具かよ。

「君が望むなら、縛っても構わないよ」

どんどん話がマニアックな方向に進んでいる! エルダーリッチの顔が近づいてくる。

「肉体的ならびに精神的快楽……実に興味深い研究テーマだ……」

エルダーリッチの指が、鎖骨を撫でる。背筋に、淡い電気が走る。

「それを、味わってみないか……?」





*   *   *





何もかもソラのおかげだ。我は縄張りから自由になり、外の世界に出ることができる。いちばん頑張ったのはソラだ。労ってやらなければ。

我がソラの寝室に向かっていると、あろうことかフェリスとばったり出くわした。

「どこへ行くつもりだ?」

「あなたには関係ないでしょ」

フェリスは私のスリッパから頭の先まで見上げて、ふんと鼻を鳴らした。

「なぜお前は、自分の枕を抱えている?」

「あなただって、枕を抱えているじゃない!」

「これは、護身用だ」

「この城に何が棲んでるっていうのよ! っていうか、そもそも枕が何の役に立つの!」