念じるといっても、どうすればいいのかピンと来ない。俺はここへ来てからのいろんな思い出を巡らせながら、黒い板に手を当てた。結果わかったのは【門】は板ではなくて、大迷宮のあの階段のような、物理法則を無視した空間だということだ

「おじけづかず、前へ進むんだ」

わかった、と返事して、俺は【門】を潜った。真っ暗な世界から視界が開け、そこに現れたのは――。

「……あれ?」

城の大浴場だった。

「どういうことだ?」

みんなも、次々と【門】を潜ってくる。そのみんなを見回すと、エルダーリッチはニヤリと笑った。

「なるほど、君はなかなかの好き者らしいな」

「そういうわけでは……」

なるほど、強烈な思い出のある場所に転送されてしまったらしい。ホエルにマッサージという名の虐待を受けた場所だ。と考えつつ、あの豊満な肢体も実に忘れがたく――。

「ひとり女の子に囲まれていれば、いろいろとあるだろう。刺されない程度に奔放に振る舞うがいい」

ぽんぽんと背中を叩かれた。リュカとフェリスの視線が痛い。

「しかし広い風呂だな。君のこだわりかね」

「風呂だけじゃないわ、この城はすごいの!」

リュカが胸を張る。

「お前が威張ることではないだろう」

フェリスがぼそりと言ったけれど、聞こえていないようだった。

「なるほど、ちょっと見て回りたいものだな」