「あれは私が修行中の身であったときに考案したものだ。誰にでも使える魔道具ではあるが、はっきり言って非効率だ。あらゆる魔法に使える水晶球が、ひとつ無駄になる。転移先も自由に決められないし……」

そう言って、おとがいに指を当てる。

「ということは……その転移水晶は、最初からこの森への流刑のために作られたのだな。まったくもって度しがたい。この大迷宮は、そんなことのために作ったのではない。賢者に対する侮辱というものだ、ソラ」

エルダーリッチは紅茶を飲み干すと、再び立ち上がった。

「君には特別に、もっと便利な魔法を見せてやろう」

そう言って、虚空に指を向ける。指先が紫色に光ると、そこに黒い板のようなものが出現した。

「超越魔法【門】だ。離れた空間同士を、どこでも繋ぐことができる。君はもう気がついているだろうが、この大迷宮に出口は存在しない。この【門】だけが、唯一外へと出る手段なのだ」

「便利そうですけれど、地味ですわね!」

フウカはこういうとき、あまりにはっきりと物を言ってしまう癖がある。エルダーリッチは、フウカを睨み付けた。