「それもまあ、ごもっともだな」

「ハグはいいものだよ~」

いつの間にかホエルが背後にいる。とても嫌な予感がする。

「優しい気持ちに~なれるからね~」

そっと俺の腋の下に手を差し込む、背中に柔らかい感触。嬉しい、嬉しいんだけど――。

「ぎゅ~」

――メキメキメリメリメリ

「あぐえええええええええええ! 潰れう、潰れううううううう!」

背中に当たっているふたつのシアワセは、肋骨の悲鳴によって意識の遙か彼方へと追いやられる。

「ふたりとも、ソラから離れろ」

リュカとフェリスが、強引にエルダーリッチとホエルを引き剥がす。

「ええ~ハグ大好きなのに~」

エルダーリッチは、やれやれといった表情で席に戻った。フェリスは、埃を落とすようにして俺の身体をはたく。

「簡単に身体を許すな」

ジロリと睨まれた。

「とはいえ……」

エルダーリッチの目は、先ほどの優しい目つきから一変して、苦い表情を浮かべた。

「この森が、まるでゴミ箱のように扱われていたとは……許しがたいことだ。そのときのことを覚えているか?」

「なんか魔法使いっぽいやつが、濁った水晶球をこっちに向けてきたんだ、そしたら森の中にいた」

「ああ、あれか……」

エルダーリッチの苦い顔が、さらに歪んだ。