「どうもしないさ。君たちが人間である彼をリーダーに置いている以上、客人だ」

「そうでなければ、結果は違ったようね」

リュカの言葉のあと、しばらく沈黙が流れた。

「………………」

エルダーリッチは、音も立てずにティーカップを置いた。

「刺し違えてでも、止めるつもりだった。これは正直に話しておこう」

リュカもフェリスもフウカも、やるならやってやるぞという顔をしている。フウカはひとり、紅茶を楽しんでいた。

「これ美味しいよ~」

「はいはい、話が終わってからね」

「君たちも飲むといい、冷めてしまっては美味しくない……それはそうと」

エルダーリッチは指を組んだ。

「何もかも予想外なのだよ。本当に驚いている。私の最高傑作、アジ・ダハーカを破られるとは思ってもみなかった。それも、人間が」

「ひとつ聞きたい。どうしてあんな大迷宮を作って、魔物を閉じ込めるようなことをしたんだ?」

「魔物が人類の生存を脅かしていたからだ。私は人類を救うために、当時最大の魔物だった五体を大迷宮に閉じ込めることに成功した」

「待てよ、それは確かホエルが子クジラだったときの話だよな……」

ということは彼女は――。

「女性の歳を詮索するものではないよ」

そう言って、彼女は笑った。