エルダーリッチが戦う意思を見せていない以上、斬りつけるわけにもいかない。俺たちは彼女に導かれるままに、食堂へと案内された。
「まあ、ゆったりとくつろぎたまえ。久しぶりの客人だ。私も嬉しく思っているよ」
エルダーリッチが指を動かすと、食器棚から茶器が飛び出して、食卓に並んだ。パチンと指を鳴らすと、ティーカップに紅茶が湧いて出た。
「さあ、早く座って。心配ない、毒など入っていないよ」
「それは確認済みだ」
「ということは……君は錬金術師か」
《鑑定》を使ったことを見抜かれたらしい。こいつが大迷宮を造り上げたことはわかるが、それ以外は、謎に包まれている。
「どうした、早く椅子に座ってくれ。立ち話は好きじゃない。それとも、私に怯えているのかな?」
「………………」
俺が席に着くと、みんなもそれぞれ椅子に座った。ミュウは、俺の膝に収まった。
「正直、私も驚いているのだ」
エルダーリッチは、紅茶をひとくち飲んで言った。
「あの大迷宮を突破する者が現れるとは……それも人間が、ね。正直、森の中に人間がいたことに驚いている。君以外の四人はそうではないようだが」
「確かに私は人間ではない。なら、どうする?」
フェリスが、エルダーリッチに鋭い目を向ける。しかしエルダーリッチは、怯む様子も見せない。