ミュウは、真っ黒な石ころになり――床を、転がった。

「そん……な……」

信じられない。

信じたくない。

俺をかばったのだ。

俺の安易な作戦が、ミュウの命を奪った。

孤独な森での生活。そこでできた、最初の、仲間だった。コマンドウルフから救い出したこいつは、どんどん強くなって、頼もしい相棒に育った。それが――。

昨夜の、ミュウの声が、脳裏に響いた。



『ソトノセカイ、タノシミ!』



外の世界。それは、こいつの命を奪ってまで得るべきものだったのか? 森の中で大人しく暮らしていれば、こんなことにはならずに済んだ。

「ソラ、追撃が来るわ!」

リュカの言葉が、あまりにも遠くに聞こえる。

【界面爆轟】が通じない、銀色の鱗。死角からの攻撃を、正確に察知する首。魔物とは思えない、ビームによる攻撃。こいつは――この大迷宮は。

「人工物……」

「ソラ、避けて!!」

俺はミスリルの剣を放り出して、アジ・ダハーカへと走った。そのすぐ背後でビームが爆発する、その熱を感じながら、俺は走った。



【疾風迅雷】



俺はさらに速度を上げて、吶喊する。

俺は錬金術師だ。

ハズレスキルの錬金術師だ。

錬金術とは〈無機物〉を操作する技能のこと。

奴は生物ではない――人工的に造られた〈無機物〉だ。

〈無機物〉相手なら――俺は、アジ・ダハーカの冷たい腹に掌底を叩き込む。