俺が《分解》した壁は、きれいに閉じていた。アジ・ダハーカは、壁を再び《分解》する隙を与えてくれるだろうか。

「……背後から焼き殺されるのがオチだな」

どうしても、こいつを倒さなくてはならないらしい。



――グルゥオオオオオオオオオオオオオン



巨大な尾が、俺たちをなぎ払おうとする。竜王リュカは羽ばたいてこれを回避、フェリスは隙に乗じて大きく跳躍、噛みしめた氷の剣で、アジ・ダハーカの長い首に一撃を加えた。しかし氷の剣は粉々に砕け散り、やはり銀色の鱗を傷つけることは叶わない。

「フェリス、奴の背後に氷の壁を貼ることは可能か?」

「どういう意図で……いや、やってみよう」

フェリスはアジ・ダハーカの絶え間ない攻撃を間一髪で躱しながら、その背後に冷気を放った。たちまちアジ・ダハーカの背後に鏡のような氷の壁が出現する。

そう――鏡のような。

「……なるほど、やっぱり手段はある!」

氷に映ったのは、アジ・ダハーカの頭の後ろだ。そこには、銀色の鱗が貼られていない、わずかな隙が見えた。

「あそこを狙うしかない! みんな、できる限りこいつを足止めしてくれ!」

たった一箇所の弱点。そこを狙いに、俺はアジ・ダハーカの巨体を大きく迂回する。



――グルゥオオオオオオオオオオオオオン



それを追おうとするアジ・ダハーカに、無数の雷撃が突き刺さる。