気に入ってもらって良かった。ソフトクッキーには、結構自信があったのだ。

それはともかくとして。

「そもそも俺たちを閉じ込めるために、大迷宮は存在する」

俺は先ほど、檻の中で互いを攻撃し合っていたスケルトンを思い返す。その姿は、森の中で争っていたリュカやフェリスと重なっているように感じた。法がない世界に放り出された魔物たちは、必ず縄張り争いを起こし、殺し合う。それを目的に、この大迷宮が造られたのであれば――。

「だったら、わざわざ親切に出口なんか作ると思うか?」

「それは……」

フェリスが呟く。

「確かに、ソラの言うとおりだ。ならば、いくら大迷宮を進んでも、意味はない」

「となれば……帰るしかないのでしょうか……お兄様……」

フウカが不安そうに俺を見上げた。

「少し、考えさせてくれ」

俺たちは、必ず森を出なければならない。必ずだ。しかし十中八九、この大迷宮には、出口など存在しない。

ならば――。

「ズルをするしかないな」

この大迷宮は人工物だ。《構築》されたものだ。俺は立ち上がり、道具を片付けた。

「つまり《分解》が、可能ってことだ……!」

壁に手を触れて、スキルを発動させる。



《分解》



壁がガラガラと崩れ落ち、部屋に〈材質不明の石〉が転がった。

「すごい! お兄様!」

「なるほど~確かにズル~い」