ホエルのスキルだ。俺たちはずぶ濡れになっただけで済んだようだった。

「君がいて良かった」

「どうとでもなるよ~」

「心強い仲間が集まったもんだ」

ホエルは水がすべて流れきったのを見届けると、【天衣無縫】でみんなを元の場所に引き上げた。

「申し訳もできませんわ! わたくしったら、本当に不甲斐ないことを……」

「気に病むことはないぞ、フウカ。みんな助かったんだから」

「濡れるのは好きじゃない」

「そう言ってやるなフェリス」

しかし、ただの水で本当に良かった。あれが酸や毒液だったらと思うと、ゾッとする。

「これからも罠があるかもしれない、慎重に進もう」

水の流れきった廊下を、再び進む。すると、遠くからゴウゴウとくぐもった音が聞こえてきた。

「次はなんだ……?」

廊下を抜けて部屋に入った瞬間、凄まじい嵐が俺たちを襲った。

「これは……!」

閉鎖空間で嵐が発生するなんてことは、あり得ない。しかしこの大迷宮では、そのあり得ないことが起こるのだ。

「わたくしが対処致しますわ!」

フウカは両手を前に出して、嵐を睨んだ。



【天候操作】



ふっと、嘘だったかのように嵐が止んで、部屋が静まりかえる。天井からひたひたと水滴が落ちた。フウカはメガネをくいっと上げて、胸を張る。

「汚名返上になりましたかしら?」

「よくやってくれた、フウカ!」