森の端までは、ずいぶんな距離があった。しかしレベルアップを重ねたおかげで、まったく疲れは出ない。もちろん、固有種四人も、ミュウも平気だ。

「そろそろ~見えてきたね~あれだよ~」

ホエルが指をさす。木々の陰から、徐々に黒い壁が姿を現した。

「すごいな……」

巨大な壁が、一面に広がっている。不思議な素材でできていて、光をまったく弾かない。継ぎ目もなく、滑らかな表面がどこまでも続いている。



《鑑定》



〈材質不明の石〉



これでは、なんの答えにもなっていない。《鑑定》で正体がわからないということは――。

「誰によっても、名付けられたことがない物質……」

つまり、人為的に生み出され、かつ人々に広まらなかった物質だ。大迷宮の異様さの片鱗が、早くも見えた。

「大迷宮の入り口は無数にある」

フェリスが言った。

「しかし……どこから入っても、必ず同じ場所に辿り着く」

「……ともかく、行ってみよう」

壁に沿って歩いていると、ぽっかりと空いた四角い穴を見つけた。俺たちはカンテラを持って、穴をくぐった。

ついに大迷宮に足を踏み入れたのだ。

そこで俺は、奇妙なことに気付く。

「……どういうことだ?」

どこまでも続く階段が、俺たちの来た外側へと続いていた。しかしその先は真の闇だ。外から見る構造と、内部が一致しない。俺は階段に《解析》をかけてみた。