よほど役立ちそうなものを見つけない限り、《鑑定》は使わないことにした。代わりに目を使わなければ。〈完治の薬草〉は、淡く光る水色の草だった。役に立つ植物は、それなりに目立つものではあるらしい、という予測を立てる。

「とにかく、何か見つけないとな」

さっきのコカトリスみたいな怪物に出会わないよう、足音に気をつけながら、薄暗い森を歩いていた。ときおり、ガサガサと音が聞こえて、そのたびに恐ろしくなった。きっと凶暴なモンスターは、コカトリスのような巨大なものに限らないに違いない。

「今やられたら、いっかんの終わりだな……」

〈完治の薬草〉はもうないのだ。俺は慎重に森を進んだ。すると、急に強烈な臭いが鼻を突いた。

「くっさ! なんだこりゃ」

とんでもない臭いだ。俺は臭いのを我慢しながら、その源を探す。すると木のうろに、キノコが生えていた。真っ赤なカサに、緑色の斑点。明らかに「俺っち毒がありまっせ!」と主張している。しかし――。

「何かに使えるかもしれないな」



《鑑定》



〈猛毒茸〉



「そういや、さっきから物音がしないな」

おそらくだが――この猛毒茸の臭気のために、モンスターが寄ってこないのかもしれない。ということは、これがあれば、ある程度安全が保障されるということになる。

「いや、それだけじゃないぞ……」