「ありがとう、君たちがお世辞を言わないのはよく知ってる。でも俺は、むかし大迷宮に挑んだフェリスよりも、かけ離れて強いというわけじゃないと思うんだ」

たぶん、強いだけでは、あの大迷宮は攻略できない。俺にはそんな予感があった。ホエルも言っていたけれど、大迷宮攻略を試みた魔物は、数多くいたらしい。しかしその誰もが、ことごとく失敗している。ならばどうやって――。

「……ちょっと、外の風に当たってくるよ」

テラスに出てみると、もうとっぷりと日が暮れていた。遠くで魔物の声が聞こえる。満天の星空、涼しい夜だった。

「どうしたもんかな」

このまま、のんびりと城で暮らしているわけにはいかない。どうしてもこの森を出たい。しかし、大迷宮を攻略できる確証がないのだ。そんな賭けにみんなを巻き込んでしまって良いのだろうか。ポケットから取り出したオリハルコンの指輪を、ぼんやりと眺めてみる。満月が映り込んで、きらきらと輝いていた。

「ソラ!」

振り向くと、ミュウがいた。ミュウはぽいんぽいんと跳ねながら、俺の足下までやってくる。

「みゅ! ソラ! オウサマ! ツヨイ!」

「ありがとう」

「ツヨイ! ダカラ! ダイメーキュー! ダイジョウブ!」

そう言って、足にぶつかってくる。

「アイボウ、イル! トモダチ、イル!」

「そう、だな」