「リュカと呼んでくれた方が、私は嬉しいわね」

木剣を持っている手が、ビリビリと痺れている。もう一度さっきのような剣戟があれば、耐えられないかもしれない。

ならば次の一合で決める。

リュカは木剣を上段に構えた。俺を叩き伏せる心づもりがある。

「ソラ。もし怪我をさせたら、たっぷり軟膏を塗ってあげるからね」

「楽しみだけど、たぶんお預けになるかな……次で決めよう」

「それはソラが決めることじゃないわ」

「いや」

俺はリュカの上段に対して、下段の構えを取る。

「俺が、決める」



【疾風迅雷】



――バァン!



俺の背後で電流が弾けた。その爆発力を利用して、俺は一気に間合いを詰める。俺自身も、視界をギリギリで保っているほどの速度だ。リュカはそれに対応しようと木剣を振り下ろす――しかし俺のすくい上げるような一撃は、リュカの木剣の握りを正確に捉えていた。



――カァン



弾き飛ばされたリュカの木剣が、大きく宙を舞い、闘技場の床に転がる。一瞬遅れて、俺の速度が巻き起こした突風が、庭の木々を揺らした。

「……怪我はないか、リュカ」

「……ええ……問題ないわ」

暗い声に、少し心配になる。しかしリュカは木剣を拾うと、爽やかに笑った。

「さすがはソラね。真っ正面のぶつかり合いで、負けるとは思わなかったわ」

「竜になっていたら、君の勝ちだったよ」