みんなはいちど元の縄張りに戻り、俺が王として森に君臨したことを布告した。それから俺が考案した、魔物にもちゃんと伝わるような、できる限りシンプルな法を森に敷いた。



一、 狩猟以外の争いを禁ず

二、 現行の縄張りを動かすことを禁ず

三、 縄張りの間に共有地帯を設け、そこでの狩猟採集は自由とする



すべて〈混沌の地獄〉を防ぐための法だ。三はちょっと複雑だけれど、要するに縄張りの外でも、それぞれの種族が狩猟採集ができる場所を作るということだ。これは子孫の増減に対する食糧供給をコントロールすることが目的で、子供を食べさせるためにどうしても縄張り争いをしなければならない、という状況を防ぐためにある。

「ソラはすごいわね。これなら、無用な争いを避けることができるわ」

いちばん最初に帰ってきたのはリュカだった。そもそも縄張りの自治にいちばん熱心だったのがリュカだから、法の通達もスムーズに進んだのだろう。

「うまく機能してくれれば良いんだけど」

「私はきっとうまくいくって信じてる……ソラが作った法なんだから」

リュカはソファーでゆったりと身体を伸ばしていた。縄張り維持の重責から解放されたからだろう。

「俺も、ちょっと散歩してくるよ」