背骨の外側を、ぐにっ、ぐにっ、と良い力加減で揉んでくれる。それがどんどん下に降りていって――。

「ちょ、そこはお尻だから!」

「お尻だね~」

そこからさらに太ももに手が伸びる。細い親指が、筋肉を心地よくほぐしていく。そして指はふくらはぎへ。でも駄目なのだ、俺の神経は背中に当たる柔らかい感触に集中している。ホエルの指が移動するたびに、にょるんにゅるんと、ふくらみが擦れ合うのだ。

「あれ~、反応悪いな~」

「いや、そんなことは……」

「ちょっと力入れるね~」

ホエルの白い手が股関節に回り、ぐっと力が入ったその瞬間、俺は人間の身体から鳴ってはいけない音を聴いた。



――ドゴキュッ



「ミッギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

痛い痛い痛い痛い痛い!!

「ホエル!! 痛い!! それめっちゃ痛い!!」

これが固有種最強の膂力を持つ白鯨のパワーか。あまりの痛みに目がチカチカする。しかしホエルは、俺の悲鳴を別の意味に勘違いしているらしい。

「わかるよ~、イタ気持ち良いよね~、広げるよ~」



――パキパリミシッ、メリメリメリメリメリ



「ほんぎゃああああああああああああああああああ!!!!」

「気持ち良いと、声出ちゃうよね~わかるよ~」

「駄目ですホエルさん!! 人間の関節はそんなふうには広がらないようにできていっぎゃあああああああああ!!!」