ひそかに楽しみにしていた、大浴場だ。城の背後に聳える岩山から、こんこんと湧き出る天然温泉を引いている。お湯を《分析》にかけると、肩こり、肉体疲労、精力増強に効果があると出てきた。

精力増強してもしょうがないのだが、とにかく疲れはとりたい。俺はミュウを連れて、大浴場へ向かった。

「オフロ! オフロ!」

「そうだぞー、大きいお風呂だぞー」

大浴場の扉を開くと、向こう側の壁が湯気で霞むほどの広さに、我ながら圧倒される。やっぱり錬金術は、すごい。

「これでハズレスキルなんて言われるんだから、あのときのみんなが持っているスキルってのは、もっとすごいんだろうな……」

でも、そんなに寂しい気持ちにならないのは、きっとリュカたちがいてくれるからだろう。この森にとばされなければ、彼女たちには会えなかったのだ。もちろん、ミュウにも。大変なことはたくさんあるけれど、なんというか、生きることに一生懸命になれている。

向こうの世界にいたときには、考えられないほどに。

俺はシャワーで全身を洗い、ミュウもころころと洗ってやり、抱えたまま湯船に浸かった。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~」

お湯が全身に染み渡る感じ。なんだかんだで、やっぱり疲れていたらしい。俺は天井を見つめながら、むにむにとミュウを撫でていた。

「ホントに、いい湯だなあ……ん?」