「この森で知らない者はないわ。四体の固有種は、私、フェリス、不死鳥、そして白鯨が最後の一体」

「白鯨ってのはそんなにヤバいやつなのか、あの不死鳥よりも?」

「脅威としての方向性が違うわ。不死鳥は魔物。でも白鯨は……言うなれば現象よ」

「そんなに強いのか」

ふたりに尋ねると、フェリスが首を振った。

「強弱の問題じゃない。嵐や地震と戦えるか、そういった次元の話だ」

ともかく白鯨というのは凄まじいやつらしい。

「なら、なおさら逃げるわけにはいかないな。今からでも会いに行こう」

俺がソファーから立ち上がると、フェリスは不思議そうな目で俺を見た。

「無視することもできるんだ。素直にホイホイと出て行くのはソラらしくない。理由があるのか?」

「ああ、ずっと考えていたことだ」

俺たちが去れば顕現するであろう〈混沌の地獄〉。そしてリュカがこの森に対して抱いている責任。そこに俺は、答えを出さなければならなかった。

「俺は、この森をひとつの共和国、国にしたいと考えてる」

この森は、四体の固有種によって治められている〈寡頭制〉だった。だからひとりでも欠ければ政体が乱れ、争いが発生する。

「クニ……とはどういうもの?」

「つまり俺たちが、法……決まり事を作って、魔物たちに与える。法の下で治められた場所を、国っていうんだ」

リュカは、ふむふむと頷く。