ちなみに、コンロができたのは、リュカによってもたらされたスキル【紅蓮灼熱】があったからだ。命令があるまでは、けして止むことのない炎を、うまく調節して使えるようにしている。ちなみにフェリスから受け継いだ【絶対零度】は、永久の冷気をもたらす。こちらは冷凍庫として機能していた。

「リュカもお代わりいるか?」

そう尋ねると、黙ってこくりと頷いた。

「ボクモ! ボクモ!」

「はいはい」

俺は冷蔵庫からコンデンスヤシの壺を取り出して、鍋に注ぎ、コンロの火を点けた。温まっていく樹液を見ながら、思う。リュカをあのままにはしておけない。俺といたいと、願ってくれたリュカを。必ず、何か手を打たなければいけない。これが、俺の責任だ。





*   *   *





「白鯨、これは大変なことです。まさか竜王がすべてを捨ててこの森を出ようだなんて、信じられます? わたくしは、はらわたが煮えくり返る思いです」

「わたしは~」

大地から声が響き渡る。それに被せるように、巨木に留まった不死鳥が言った。

「そうですよね、許せませんよね! 〈混沌の地獄〉への逆戻りはごめんです! そうはおもいませんこと?」

「べつにわたしは~」

「でしょう? でしょう? 白鯨ならそう仰ると思っておりました。その通り、竜王はどうしてもこの地に引き留めなければなりません。でないとこの森はおしまいです!」