「こんな馬鹿を誘ったことを、後悔してるんじゃない? ……自分のために、この森を〈混沌の地獄〉へと戻そうとしているこんな私を……ふたつの相反する責任を、考えなしに負ったこの私を……ソラと一緒に森を出る約束と、この森の〈平定者〉であること、どっちも私は捨てられないの……怖いのよ……」

涙を流しながら、口の端を歪める――見ていられなかった。

「リュカ」

俺はリュカの肩に手を置いた。

「お前がどれほど長くこの森にいて、どれほど強く平和を願ったのか、俺なんかにはわからない、途方もないことだと思う」

俺はリュカの目元に指をやって、涙をそっと拭った。

「だから、悩むことをやめろなんて言えない。ただ……」

リュカの手を、そっと握る。

「あのとき君と握った手を、放すつもりはない。俺は君の無責任に、どこまでもつきあうよ」

「ソラ……」

リュカの頭を、俺はそっと撫でてやった。フェリスはこちらには見向きもせずに、涼しい顔で樹液を啜っている。

「甘いな」

と、ひとこと呟いた。

「樹液の話だ。お前たちは好きに抱き合っていろ。気が済んだらおかわりを温めてくれ」

こちらに、スッとマグカップを寄こした。

「コンロとやらの使い方がわからん」