「なんであろうと、私には治める責任がある……その力を持っているから……」
「力があるから責任があるというのか、馬鹿馬鹿しい。責任は行動に伴うものだ。お前に力があろうと、なかろうと、それは変わらない」
ひとり孤独を育んできた、フェリスの言葉は重い。
「お前はソラに助けられ、ソラに手を差し伸べられ、その手を取った。この森の魔物どもを宥めるために、お前は一度握った手を振り払うのか。それがお前の言う責任ならばそれでいい、好きにしろ」
フェリスは再びソファーに座り、樹液を口にして目を細めた。リュカは膝の上でこぶしを握り、肩を震わせていた。リビングを、静寂が支配した。俺も、何も言えなかった。ただ、見守るしかない。
リュカはやがて、ぽつり、と言った。
「私は……本当に馬鹿だ……」
こぶしの上に、涙が落ちた。
「しょせんはひとり……狂った森で気張っていただけの馬鹿だわ……ただ、嬉しかったの……ソラに森を出ようと言われて……本当に……嬉しかった……そのときすべてを忘れた……」
リュカは赤くなった目で、俺を見た。
「私は……ただソラといたいだけなの……」
次から次へと、涙が溢れ出てくる。