「リュカ! モリノソト、デル!」

我は、自分が思っていた以上に、ひどく動揺した。ソラが笑顔を見せる。

「いいんじゃないか。外がどんな所だかは知らないけれど、見聞を広げるのは悪いことじゃないと思うぞ」

「私も、ソラが良いと言うのであれば賛成だ」

食後のお茶を飲みながら、フェリスが頷く。ソラが続けた。

「こう言うと自分勝手だけどさ、リュカがいると心強い」

「私は、その、ソラと一緒にいたいと思ってる……」

口ごもりながらも、私は正直な気持ちを打ち明ける。

「でも……」

我は、獄炎竜リンドヴルムは、森の秩序を守るべき存在だ。我が森を去れば、魔物たちは再び終わらぬ争いを始めることだろう。我が力は、森を治めるためにあるのだ。

その私が、ソラと――。





*  *  *





俺はリュカに向けて手を伸ばした。リュカは本当に良い仲間だ。彼女がいれば心強いし、旅はうんと楽しくなるだろう。それに、今までずっと森で生きて来たリュカに、外の世界を見せてやりたい。

ふと窓を見ると、霧のようだった小雨が、凄まじい土砂降りになっていた。雷が轟いて、洞窟内に響き渡る。

「こんなに天気が悪い日は、この森に来て初めてだな……」

そんなことを言いながらリュカとフェリスを見ると、ただごとではないという表情をしている。

「面倒なことになりそうだな」

フェリスが呟いた。