「どうかしたのか? 調子が悪いなら言うんだぞ」

「いや、そういうわけじゃないのよ……ありがとう」

そう言ってリュカは、ぼんやりと窓の外を眺めながら、ミュウを撫でていた。

洞窟の外では、小雨が降っている。

「………………」





*  *  *





昨日の夜、外でソラとフェリスが抱き合っていた。

それを見かけた私は「よほど寒かったらしいな」などと軽口を叩いた。

しかし同時に、胸に奇妙な痛みが走ったのだ。こんなのは生まれて初めてのことだった。



仲間になったフェリスが、ソラと友好な関係を結ぶのは、とても好ましいことであるはずだ。それが雄と雌の関係であっても構わない。ソラは私の命を救った。そして私はソラが森を脱出することに協力する。私とソラとは盟友なのだ。

それなのに――どうしたわけか、私はソラとフェリスの仲睦まじい姿を、喜ばしく思うことができない。

今朝になっても、未だその気持ちを引きずっている。自分の愚かさが腹立たしい。

私はいったい何を求めているのだろう。

摂理と秩序が保たれていれば、それで充分だった。

それだけを抱えていた胸の片隅に、今は――ソラがいるのだ。

心の中で、奇妙なズレが起こり始めている。

けして元には戻らない――致命的な。

「リュカ!」

ゴムから元の姿に戻ったミュウが、我に話しかけて来た。