特別な趣味があるわけではない。さらに言えば、特別でない趣味もない。なんとなく始めてみたいくつかのスマホゲーも、今はログインボーナスを拾うだけの単純作業になっていた。
大学に入る前は、よく携帯ゲームをやったもんだけれど、今はちょっと集中力が続かないというか、めんどくさいというか……そんな感じで、俺は駅前の交差点でスマホをいじっている。
俺、如月空はそんな人間だった。
「わりぃ如月、遅くなっちまった」
友人の男女が現れる。
こんな俺でも一応サークルには入っているのだけれど、それが『余暇活用研究会』というどうしようもないもので、そんなところで余暇の活用が研究できるはずもない。みんなひたすらスマホをいじったりダベったり菓子食べたり、暇を持て余している。
「すまんね、空ちゃん」
そう言って女の子が親しげに肩を叩いてくるのだけれど、こいつらはつきあっていて、大学生カップルにありがちな、ゆるい時間感覚で生きているらしい。俺は友達が幸せなのは悪いことじゃない、と思えるくらいには大人になったつもりでいる。
「じゃ、行こっか」と彼女が言った。