病院の屋上で街を見渡す。
 「やぁ、梨久君。久しぶりだね」
 後ろから聞きなれた声が聞こえる。
 「嵐山先生、ご無沙汰しています」
 「君も随分立派になったね。祈莉ちゃんの事があってからたった3年なのに。どうだい? 医大生は大変だろ」
 「毎日が嵐のようですよ。僕は手術ができない分、沢山の知識を頭に入れて祈莉の病気を治す方法を見つけたくて」
 「君ならきっとできるよ。頑張って。またいつでもおいでね。お父さんはどうかな」
 「父とはあれからちゃんと話し合ってしばらく精神科に通って貰ったのですが去年、本格的に仕事に復帰しました。父は母が亡くなってからうつ病にかかってたみたいで」
 「そっか。回復に向かってるんだね。良かった。おっと、時間は大丈夫かい? そろそろ戻らないといけないだろ」
 腕時計を見る。
 次の講義まであと20分をきっていた。
 「あっまずい。それでは先生。失礼します」
 そう頭を下げて走り出した時

 ''頑張ってね''

 そう背中を押されたような気がした。
 祈莉、いつか僕に言った君の1番好きな言葉。
 君はいつでも僕の中で生き続けてるよ。
 待っててね。必ず僕が祈莉と同じように苦しんでる子を助けるから。
 それまで待っててね。
 祈莉のお母さんに貰った紙切れを開く。
 祈莉の大好きな言葉。
 僕の大切な言葉。

 『⠄⠕⠳⠥⠳⠴⠐⠕⠁⠞⠐⠟⠾⠃⠣⠝⠐⠝⠫⠕⠃』


 「私は死んだ後でも生き続けたい」