「つまりさ、かっこいい楡くんは一瞬ごとにちがったかっこよさを見せてくから、瞬き厳禁て話よ」
「無理すぎ」
1年前、学校が離れたことで疎遠になっていた友達が、親友が、自殺した。その1年前、たまたま遭遇したときに、彼女は急いでいるからいまは話せないということを言って、でもそのあと、どうしても相談したいことがある。麦にしか話せないことがある。聞いてくれないか、って、なんでもないような顔して言った。
いつでも連絡して、と、わたしは言った。連絡は来なかった。それでもわたしから連絡したら、言ってしまった手前話さなければいけないとプレッシャーを与えてしまうのではないか、追い詰めてしまうのではないか、と思って、聞けなくて、そのままだった。
1年も、わたしに相談したかったことを抱えていたと思う? それのせいで死んだと思う? もう解決したって思うのが妥当じゃない?
死んだら会えるかな、と、思う。死んでも会えないかな、とも、考える。
自ら死んだら、どう言って会いに行けるかと、唸る。
結局いつまでたっても死ねなくて、母との会話を思い出すたび泣いて、楡と話してると安心する。
死というものに、生というものに、こだわりがない。どっちでもいい。どうでもよくはないんだけど。楡は、べつにいんじゃん、と言った。絶対どっちかに固執しなきゃなんねえの、疲れるし。でも目の前ではやめろよな、俺、流血無理。とも。