「教えてくれてありがと。人気者の楡くん、喪服は買っといたほうがいいかもね」
「はあ? まわりまだ、全然元気……あ、おまえのため?」
「うん。10年なんてあっという間、って、前に楡が言った」
「そうでしたそうでした。……でも俺、まだまだ成長する気だしなあ。もっと未来のことでいいべや、10年はあっという間だけど、瞬きのがあっという間だし遠いもんだよ」
「何それ」
わたしはべつに、あんまり、生きるということにこだわりがなかった。むしろ無に帰りた、みたいな気持ち、強め。て感じで。
先生たちからの信頼。期待。プレッシャー。重荷。めちゃくちゃ重い。笑顔で頑張りますと答えながらすり減らしていって、ついには何もかもが面倒になって、でも放棄することの恐怖もあって、崩れていった。
過呼吸、不眠症を毎晩出現させて、それらのせいの体調不良をまた先生に大丈夫? あなたのために言うけどこうしたほうが、それのせいだよ馬鹿野郎、なんて言えるわけもなくまた笑顔笑顔と疲れていって、無がほしくなる。そんなんを繰り返して。
そのあいだも楡は仲良くしてくれてたけど、仲良くしてくれてる、っていう、楡が与えてくれているっていう、その意識にまた崩れていく。
そうした日々での楡の契約。
17年間生きてきた。10年しか生きられないの10年は、想像していたよりはずっと短いけれど、いますぐ終わろうかと考えていただけに長くて。でも終わりが見えたからいま強制的に終わらせる必要も、と、なんだかんだ楽しませてもらってる。楡を引きずるみたいにして外を走るくらいには。
そもそも、17年しか生きてきてない人間が、10年の短さを語るなんてそれこそ経験が短くて薄くてそのレポートは強制終了の圧をかけられて終わるんだろう。