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「人生初さぼりおめでとう」
「チャイム鳴っちゃったの、気づかなかったんだもん」
「まあいいべや。ちゃんと保健室来たし」
「……教室帰んない楡がさぼりじゃない?」
「さぼり魔になるか。元悪魔の名にかけて」
「……」
「なんかひとことくらい言ってくんない?」
「うーん」
ベッドに横になりながら、椅子を引いてあたりまえのように隣にいてくれる楡と軽口を交わす。
「悪魔、といえばさ。悪魔だって知っても嫌わないでくれたおまえに感謝してる。賭けだったんだ。悪魔と契約してどうこうっつーのも、探り入れた感じだし」
保健室の先生は、楡が教室に戻らないことに関して苦言を呈さなかった。むしろ、心強いならいいんじゃない? 授業出たいなら戻ったほうがいいと思うけどね、と。緩い。でもこの緩さが必要だったんだと思う。
「──んで、そんなおまえが嫌いなのって、担任?」
「うん」
「なんで?」
「わたしが仲良くしてた子と釣り合わないからって引き剥がした挙句、二者面談で母に友達がいなくて可哀想って言ったらしくて」
「あー、地獄みたいなことになってんな」
「うん」
「うん」
ふたりでうなずきあって、はあー、と脱力した。本気でちからが抜けたというよりかは、わらいたくても保健室だし、みたいな。
わらうしかない状況って結構あるけど、それが半分、いまは楡がいるし、楡といたときの記憶もあるし、安心してわらえているのも半分くらいある。
「俺がいるから、とりあえず担任のそれについては1個解決な。友達」
「そうだね。ありがと」
「礼言われるようなことはしとらんけど。んで、釣り合わない、は、そいつの主観。主観も大事なときは大事だけどさ、せかいって人格の主観からすると」
「前も思ったんだけど、せかいって主観、って何?」
「がんばってわかって。俺とおまえの仲だろ」
「わかんないけど絶交はしないでね」
「はいはい」


