「また無理にわらうんだから、ほんとう、頼りにならねえですね」
だめだ。わかってしまった。まとまってしまった。こいつのせいだ。楡のせいだ。涙がこぼれてくる。止まらなくなる。絶対、表情ぐちゃぐちゃだ。
淡々と受け止めているように状況を頭に並べて、けれどそれは落ち着いているわけでもなくて。複雑なことは受け止めきれない。簡単な、事実というたったひとつだけのことしかわからないという意味。それでもよかった。そんな、情けないくらいのわたしでよかった。
思い出す。
命を預けた補導と隣り合わせの自転車二人乗り。とくに美味しくはなかったココア味のポップコーン。イケメンナルシストの楡。クレープ、美味しかった。角と羽のしくみ、なんで服着てて大丈夫だったのかって、何気に気になってたのに答えは聞けてなかった。クレープ、第2回も美味しかった。楡の遺書も早く見せろ。桜の香り、まだ思い出せてない。
「……っ、わすれろって、わたしには言ったくせになんで」
「おまえは責任感じるだろうし、わすれさせようと思ったんだよ。だけど俺ずるいからさあ、一緒に生きたいし、ならこうかなーって」
「そこまでは、じゃあ、許す。また会えて嬉しい。ありがとう」
「うん、素直でよろしい」
楡だ。本物だ。偽物じゃない? また、記憶書き換えられてない? それでもいい。許せるくらいには泣いてる。楡、楡のばか、楡、いま、楡が来てくれたってひとつだけでこんなに感極まってる。
「泣いてる? よね、これふれてもいいやつ」
「……うるさい。泣いてるよ」
「はは、認めた」
はは、じゃない。こっちがどれだけどん底にいたと思ってんだ。なんでいま言うんだ。もっと早く言ってくれていたら、と思ったけれど、もし早く言ってくれていたなら、わたしは自分で考えることもなかったんだろう。
まあ考えるもとの記憶もなかったから、嫌いがどうとか思ったのは偶然に近い気が──、ちがう、こういうことが言いたいんじゃない。言いたいことがありすぎてまとまらない。とりあえず、睨むみたいにして言う。


