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廊下を歩く。ゆっくりと、ゆっくりと歩く。無事に登校できたはいいけれど、できたのは登校までで、元気に過ごすということは難しかった。
痛む頭と止まない耳鳴りを抱えて授業を受けていたけれど、さすがに限界だ。
保健室で少し休んで、落ち着いたら家に帰ろう。母はまだ仕事中だ。迷惑、かけるわけにはいかないし。
迷惑を、
「高良さん」
「っえ」
背後から話しかけられて、思わず肩が跳ねた。振り返ろうとして、瞬間、驚くほど頭が痛くなる。耳鳴りも強くしている。きぃん、と、響く。痛い。……痛い。
「……っ」
「大丈夫!?」
その場にしゃがみこんでしまったわたしに、声の主が駆け寄ってきてくれた。楡くんだ。
──ああ、だめだ。最近ずっとこんな調子だ。体調はうまくコントロールできないし、現場の状況も、自分の心理状態も、淡々としたようにことばで表してみるくせして、深くわからないから淡々としているだけ。何もかもを見失っているだけ。わからない。
わからない、けど、大丈夫。わたしは、わたし、大丈夫じゃないと。
「ごめんね、大丈夫」
だって、いちばんじゃ……、いちばん、って、──いちばん? いちばんって、それ、やめようと、……ちがう。やめるんじゃなくて、それも許容した上で、たったひとりのいちばんには、いちばんが。ぐるぐると、痛む頭ではまとまらないであろうことを考える。いままでさんざん考えて、それでもまとまらないで今日まできたこと。
それがいままとまるわけ、とか、思うのに。


