「夏になったら本格的に受験勉強ですけども高良サン、よゆうこいてますね」

「まだ3月。春なりたて、大丈夫……じゃないかもだけどまあまあまあ。ていうか楡サンこそ、夏になったらなんて命取りっすよ」

「そっすね」

「はい」



沈黙が降りる。余命10年39日……と何分か。進路は考えて大学とか仕事とか決めなきゃなんない、そのギリなとこがいや。



もうすぐ終わりなら、学校行かなくなりたかったんだ。学校、友達と会えるのは好きだけど長時間の集団生活での拘束、嫌いと嫌いのかけあわせで結局どうしたって嫌いだから。



「楡」

「ん」

「楡さあ、将来、自分の葬式ひらいてほしいと思う?」

「おん? だいぶ飛躍したな」

「してないよ、べつに。楡が悪魔と契約したときからずっと渦巻いてる。ぐるっぐるよ、もうね」

「ふむ」

「ふむってそんなはっきりセリフらしく言わなくても」



そいで俺、知りたいっすね、みたいな適当答えて。夢だけど意識も意思もあったんだよなあ。んで、朝起きたら数字が見えんの。みんなわりと長いんだけど、おまえ、10年ちょいしかないんだわ。うちのかーちゃんよりみじけえし、なあ、どうした。



どうしたもこうしたもこっちのセリフだよ、とは思ったけれど、わたしはセリフらしく言うのが楡ほど得意じゃなかったから言わなかった。楡はいたって深刻そうに言うし、そういう迷信かよと思われるようなこと、好きじゃないのか嫌いなのか遠ざけるとこがあったし、あれこれ、“ガチ”のやつか? みたいなのになって。